かなしみは友だち

目を閉じて、じぶんはとくべつに悲惨でかわいそうな存在だと思うと、なぜか慰められ癒されるような気がしていた。悲しみは乳色の湯のようにまだ小さかったわたしの震える身体をあたためた。だけどわかっていた。それはただ優しいだけではなく、わたしを甘や…

日記(1)わたしの位置

××回目の誕生日を迎えた。 これをきっかけにふたたび文章を書きはじめよう。というわけで、このページを開いてみた――と、書き出したのは実は二日前のことで、わたしはそこから先がずっと続けられずにいた。 これはなかなかつらいことだ。以前ならわけなくで…

紀行文・南紀再訪『神々に逢いに』

眼下のぎざぎざの海岸線に囲まれた海に陽光があたり、玉をちりばめたように輝いているのを車窓から目の当たりにすると、ああまた来たのだ、と思った。東京からこの地方は地図が示すよりずっと遠く、昨晩から幾つもの電車を乗り継いでやっと辿り着いたのであ…

ひらひら舞うエメラルド色のなにか

わたしが思いまするに、言葉には捉える力というのがあって、つまりそれは、対象だとか概念だとかを網でつかまえて虫ピンで止めて固定して文字の形に定着させるという働きであって、この働きのために世界は安定し法は機能し道徳は大いに栄えみなみなが幸せな…

報告など。贅沢について

小遣い稼ぎ程度とはいえお仕事で書きたくもない文章を書くということは案外たいへんなもので、オペレーターの仕事に加え水商売もしてるところに、ハヤクカキアゲナケレバという意識が常にありながらネットに逃げたり逃げなかったり寝不足になったりする現状…

創作<15枚>

天狗のはなし ねえ、ゆーくん、天狗のこと知ってる? 子どもを攫って儀式の生け贄にするの。たまに大人も攫うんだけれど。 知らないんだ。なら、あたしが話してあげる。そうねえ、たしかに。ゆーくんみたいな人はきっと知らないと思う。都会の、まじめな、サ…

Monologue....

分かりやすく言えば<精神的な問題>が原因でまるで散歩中の犬がむりくり飼い主に鎖を引っ張られるようにして実家に帰ってから約数年、わたしは再び東京の街に降り立ち、あたりを見回して19の頃に味わった新鮮さというのは人生で一度こっきりのものだったの…

昔書いたの(掌編

「時計のない部屋」1 目を覚ます。それはあまりにも鮮やかな、目覚め。眠たい目をこすって、などという曖昧な目覚めではなくて、起きた瞬間にすべてが清明になっている、完璧な目覚め。もしかしたら、それは目覚めとは言わないかもしれない。いわば第二の誕…

昔書いたの(最初4枚)

おわりのない街 <こちら側から>Ⅰ いつもはやさしく意識をからめとっていくはずのまどろみがなかなかやってこないものだから、わたしはなかばやけっぱちになって温めたマグカップにコーヒーを注ぎ、ベッドの縁に座り、天井を眺めて、その格子模様で張り合い…

鏡の国の

薄くまぶたをあければ雪がしんしんと降っている景色がにじんでいて、何かに包まれていて揺さぶられていて、どこかに運ばれている。 それはわたしの身体がまだばらばらだった頃の話。 第三者のカメラから見ればどうということはない、ひとりの大人が、小さな…

ある小説書きの死

ばかなやつ、心からそう思う。 わたしがはじめて彼と出会ったのは、確か10年くらい前のことだったろうか、うん、たぶん、そうだね、彼が確か大学に受かるかとか受からないかとかそういう時のことだった。 あのときからさあ、存在感、あったなぁ。 演劇やって…

1/24ustまとめー未決定なわたし、そして言葉と身体

お久しぶりの更新なのです。 今回の内容は昨日のustのまとめ+補足、ということで、元々喋るのが苦手である上に、正直なところなかなか話しづらいテーマであったためか、舌が思うように動かずスミマセンでした....(´・ω・`)こういうのって、原稿用意しないと難…

よわいこ。(1)手紙 

あのひとたちが君をいじめるのは、君の才能を妬んでいるからに違いない、と言うあなたに、わたしはあのとき、違う、と言い、間をおいてもう一度違う、と言いました。ふたつの「違う」のあいだにあのひとたちがわたしを攻撃する本当のわけ、ずっとまえから分…

コミュ力不足(笑)と、身体のはなし

わたしはこれからいっぱい耐えなればならないのだろう。いっぱい辛い思いをしたりやりきれない目にあったり、いじめられたり踏んづけられたり裏切られたり、自らの愚かさを悔やんだり迷ったり戸惑ったり諦めたり、自分の無能さに呆然としたり、でも五年前く…

ぐるぐるまわる

毎日ツイッターでつぶやいてます。 それがもう、つぶやきすぎなんじゃないかってくらいつぶやいていて、こやつが巷で噂のツイッター依存症か、哀れなり、とフォロワーの皆さんの少なからずに思われているのはほぼ確実だなーと考えつつ、ふと、20人くらいし…

にんじんの色

魑魅魍魎うずまくといったらおかしいけれど、とにかくそう言っても差し支えがないような東京という街で、毎朝、人間をひんぱんにすりつぶすことで有名なオレンジ色の走る鉄の箱にぎちぎちに詰め込まれながら、会社に行ってはモニターとにらめっこをするとい…

どん詰まり感、夏

たとえば、池袋のサンシャイン通りで、いや、そこは梅田だって、下北沢だって、難波だって京橋だって、新宿歌舞伎町だって、どこだっていいのだけれど——しこたま飲んでしこたま歌って果てはうつらうつらしてとなりの人の二の腕に顔をもたせっちゃったりなん…

あたしたちだけの王国に性別はない

はーい、どうも、久しぶりです。 昨日はこれ書きながらお酒飲んでたら、書き終わるより酔っぱらう方が早くて、今日、仕切り直しです。なんでかしらん途中まで書いてたのが消えてたんで、最初からということになってしまいました。お酒飲みながら長文書くなっ…

夢の時間

わたしはときたまエロい夢を見る、のだが、実際のところそこには性器もなければそもそもはっきりとした映像もなく、現実と同じように服を着て寝ている最中で、危うげでぞわぞわして困惑してしまうのだけれど、身体の中身がこの皮膚の穴という穴から溶け出し…

はじまりのはじまりにたちどまり

さて、はてな開設です。 こういうなんていうのか、日記をアップするというのか、そういう形式のいわゆるブログ的なWebスペースを最後に借りたのは、実に、えーとかれこれ4年前とか5年前とか、そういうレベルの過去のことで、よしブログしよう!ブログしよう…